朝日新聞(2007年11月19日)「私の視点」野依良治よりピックアップ:

日本の高等教育が揺らいでいる。


理由の1つは公財政支出の貧弱さだ。総額2.6兆円、GDP比で0.5%だ。OECD加盟国中、最低の水準だ。各国が過去5年間に大幅な伸びを示す中で、唯一のマイナス国。せめてOECD平均の1.0%は実現すべきだ。


私費負担が大きい日本とは対照的に、世界の主たる大学院では学生が自立して勉学に専念できるだけの経済支援を受ける。年200万円程度の経済支援を明示する必要がある。修士課程から給付すべきだ。貸与ではない。


教育における過度の選択と集中は知の枯渇を招き、学術は疲弊する。昨今の「競争的な研究資金」偏重は、教員の教育軽視の性向とあいまって、学生にとって、理不尽極まりない。