『性の進化、ヒトの進化』古市剛史/朝日選書/1999年よりピックアップ:

…1つは、過去の歴史を学ぶことによって過去の過ちをくりかえさないようにし、将来に対する賢明なプランを立てることができるという期待である。だが、ヒトがそこまでかしこい生き物かどうかというと、疑問に感じざるをえない。


『人間はどこまでチンパンジーか』という著書で人間史を書いたジャレド・ダイアモンドは、「もう人類はだめなのだとあきらめたならば、私はこの本を書かなかったでしょう…」と、みずからにいい聞かせるように書いている。


しかし、彼の本の中には、有史以前から何度となくくりかえされてきた自然破壊やら、終点を知らないかに見える民族対立と大量殺戮の記録があふれ、どうも明るい気分にはなれない。


過去から学ぶというヒトの知性は、石油や原子力のエネルギーを用いることを覚えて強大化した利己主義をおさえるほどには、十分な進化をとげていないように思う。