朝日新聞(2007年7月23日)よりピックアップ:

久間章生防衛相(当時)の原爆投下「しょがない」発言の根っこには、原爆が早期に戦争を終らせて米兵100万人が助かったという米側の原爆神話がある。


油井大三郎(歴史学者)へのインタビュー。

(聞き手)米国の原爆観は。


(油井)キリスト教の影響の強い国なので、民間人への無差別攻撃には批判が強かった。しかし、戦争がエスカレートし、その意識が薄れていったのです。


(聞き手)投下後の反応は。


(油井)直後はもっぱら日本への報復と説明した。それが、ルポなどで実態が伝わり、46年から47年初めに、原爆正当化を疑問視する声が広まった。政権側が反論したのが「戦争終結が早まり、米兵士100万人とそれ以上の日本人も助かった」という説で、これが米国の公式見解になった。


(聞き手)その根拠は。


(油井)本土上陸の際の米軍の死者数の見積りには、4万人といった数字がありましたが、批判に対抗するため数字が膨らんでいったのです。


(聞き手)なぜ公式見解に。


(油井)49年にソ連が原爆を持ち、冷戦の中で、核兵器で国を守るという考えが浸透していった。反省すると核兵器が使えなくなる。


(聞き手)久間氏は、原爆投下で、ソ連の占領を免れたと言いました。


(油井)歴史的な根拠のない説だ。トルーマン大統領には分割占領を許す考えはなかった。46年に出された米政府の戦略爆撃調査団の報告は、原爆投下やソ連参戦がなくても45年末までに降服したと分析しています。