『現代思想』(2007年8月号)高橋哲哉よりピックアップ:
アメリカは、占領統治のための最良の「傀儡」(エルヴィン・ライシャワー)として昭和天皇を利用するという政治的な決定を下しました。
古関彰一さんの研究が明らかにしているように、憲法に象徴天皇制が入ったのは憲法9条とセットであったということです。アメリカ側が天皇を免責したのは、アメリカとしてはそのほうが国益にかなうと判断したからです。
天皇とともに軍が温存されれば、いつまた天皇の軍隊、「皇軍」が復活するかもしれない。そこでアメリカとしては、引き換えに日本を非武装化することにしたわけです。
1947年、天皇の御用係だった寺崎英成がGHQのシーボルトに、「琉球諸島の将来にかんする日本の天皇の見解」を伝え、それをシーボルトはマッカーサーと国務長官マーシャルにも伝えました。
内容はこうです(1979・80年国会議事録)。「米国が沖縄その他の琉球諸島の軍事占領を続けるよう昭和天皇は希望する。天皇は長期租借による、これら諸島の米国軍事占領の継続をめざしている。
天皇の見解では、日本国民は長期租借によって米軍に下心がないことを納得し、軍事目的のための米軍による占領を歓迎するだろう。さらに天皇は、沖縄および必要とされる他の島々に対する米国の軍事占領は、日本に主権を残したままでの長期租借(25年ないし50年あるいはそれ以上)の擬制(主権の実態は米国)に基づくべきであると考えている。
天皇によると、このような占領方法は、米国が琉球諸島に対して永続的野心を持たないこと日本国民に納得させ、これにより他の諸国、特にソ連と中国が同様の権利を要求するのを阻止するだろう」。
シーボルトは、この天皇の希望について「疑いもなく私利に大きく基づいている」という感想を持ったと伝えられています。天皇が自分の安全、安泰を保障してもらうために沖縄の軍事占領を希望したと解釈されているわけです。
天皇を免責した東京裁判の帰結として、憲法9条と、それを補完する日米安保条約、そして沖縄の犠牲が生じたといっても過言ではないはずです。