週刊金曜日(2007年11月30日)俵義文よりピックアップ:
沖縄戦集団自決について教科書から軍の強制を削除させた検定意見について
伊吹文明文科相らは、検定意見は検定審議会の専門家が中立な立場でつくったもので、撤回できないと国会などで答弁してきた。
ところが、検定意見は文部科学省の役人である教科書調査官が作成したもので、検定審議会では議論もなく通過し、審議会委員には沖縄戦の研究者もいないことが明らかになった。ウソの答弁をしてきたのである。
1956年、文部省は、国会で一度否決された教科書調査官制度を行政措置によって実現した。これは、三権分立を旨とする議会制民主主義の否定である。当初から憲法に違反して生まれた違法な存在なのである。
また、調査官の選任についても疑問がある。今回の沖縄戦検定で問題になっている村瀬信一調査官や照沼康孝社会科主任調査官は、伊藤隆東大名誉教授の教え子である。伊藤氏は「新しい歴史教科書をつくる会」結成当初からの理事で、扶桑社版歴史教科書監修者。
2006年の「つくる会」分裂後、日本教育再生機構(八木秀次理事長)の「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」が発行する予定の歴史教科書の編集会議座長である。
この伊藤氏の弟子にあたる人が何人も教科書調査官になっている。伊藤氏と文科省との「特別な関係」がうかがえる。
文科省は2000年に検定規則の第7条を「文部科学大臣は、申請図書について、検定の決定又は検定審査不合格の決定を行い」に改定していた。
つまり、2000年以降、検定審議会の役割規定はなく、審議会はお飾りで文科相が自由に政治介入して検定ができるようになった。伊吹文科相は、「文科大臣は法的には検定者であるが検定には介入できない」と答弁してきた。この答弁は、規則上からみればウソということになる。