『DAYS JAPAN』(2007年8月号)斎藤美奈子よりピックアップ:

6月26日、米下院外交委員会が「慰安婦対日非難決議案」を可決した。この件で「火に油を注いだ」といわれているのが、6月14日付の「ワシントンポスト」紙に掲載された意見広告である。


呼びかけ人は屋山太郎氏、桜井よしこ花岡信昭氏、すぎやまこういち氏、西村幸祐氏からなる「歴史事実委員会」(を名乗るわりに歴史学者がひとりも入っていないのがおもしろい)で、国会議員44名(自民党29名、民主党13名、無所属2名)と有識者14名が賛同者として名を連ねている。


この意見広告は、事実のねじ曲げ方以上に「墓穴の堀り方」「火事の広げ方」を学ばせていただく教材といえるだろう。突っ込みどころ満載なのだ。


とりわけ米市民と米議員を怒らせたのは、次の一文だろう。「1945年、占領軍は、米兵によるレイプを防ぐために、衛生的で安全な“慰安所”を設置するように日本政府に要請していた」


この話は、事実としてもまちがっている。1945年に設置された慰安所とは特殊慰安施設協会(RAA)を指すものと思われるが、これは当時の国務大臣近衛文麿の発案で、日本側が自ら米軍のために用意した施設なのだ。


『リベラルタイム』(2007年9月号)西村幸祐よりピックアップ:

意見広告を発案したのは作曲家のすぎやまこういち氏だった。氏は昨年も南京虐殺についての意見広告を制作したが、ニューヨーク・タイムズ紙に拒否されている。「贋リベラル」は、日本のメディアだけの問題ではない。


過去の日本人に汚名が着せられることは、私たちの子ども、子孫に汚名が着せられることと同義である。なぜ、そんな単純なことに多くの日本人が気づけなくなるまで、意識を鈍磨させられ、精神的にも肉体的にも去勢されてしまったかということだ。


すぎやま氏は意見広告の運動を「民主主義と全体主義の戦い」と述べているが、名言である。歴史事実の検証を避け、レッテル貼りで封印しようという策動は、言論・思想の自由をはじめから否定する全体主義そのものだからである。

編集部の添え書き:

戦争責任等の対日非難に対して、日本人はなぜ反論してこなかったのか…今回、ワシントン・ポスト紙に掲載した「THE FACTS(事実)」は日本の汚名を雪ぐための「反撃の開始」を示している。同広告主メンバーの一人、西村幸祐氏にこれまでの反響、今後の展開等をレポートしてもらった。

(by pick-up)西村幸祐氏の言う「にせリベラル」のメディアとは、西村氏の主張に同調して、こんな記事を得意気に掲載する雑誌『リベラルタイム』のことか?


やったことは、やったこと。それを否定したら、また敗ける。ウソを事実と言い張っても勝てません。


過去にドイツ人の一部がユダヤ人を虐殺したことをドイツ人が認めたからと言って、ドイツ人の子孫が汚名を着せられるわけではない。ドイツ人が、「過去にユダヤ人を虐殺しなかった」と主張すれば「嘘つきという汚名」を自ら着ることになる。なぜ、そんな単純なことに西村幸祐氏は気づけなくなるまで、知性を鈍磨させられてしまったのだろう。


西村幸祐氏は、「日本人が肉体的にも去勢された」とも書いている。去勢って、生殖器を除去したりすることですよ。知らなかったなあ、日本人に、生殖器を除去された人がたくさんいるなんて。誰がやるの、米軍かな、怖いねぇ(笑)。


全体主義であった過去の日本の悪行を、ウソをついてまで弁護しようという西村幸祐氏が民主主義者やリベラルであるとは思えない。デマを『言論の自由』で正当化するなんて無理です。