武谷三男『罪つくりな科学』青春出版社/1998年よりピックアップ:

1945年、敗戦の年の暮れに、私はGHQに対していろいろ提案する機会がありました。知人の坂西志保さんがGHQに雇われることになり、「明日、マッカーサーに会うけれど、何を進言したらいいか」と、意見を聞きにきたのです。


私は、三つのことがぜひとも必要だと話しました。(1)政治犯の即時釈放(2)農村の封建性を破るための土地解放(3)文部省の廃止。


三つの提案は、GHQで評判がよかったようです。教育についての意見には、CISのポール・ラッシュ大佐が興味をもち、何度か討論をすることになりました。ポール・ラッシュは日本に初めてフットボールをもってきた人で、戦前は立教大学で教えていたのですが、戦争が始まってアメリカに帰ったのです。


私が天皇の戦争責任を主張すると、そうだそうだと賛成していました。


なぜ文部省廃止を唱えたかというと、文部省こそが精神的な戦犯だからです。戦争指導教育の中心となり、軍国少年を育てておいて、戦後になってあわてて教科書に墨を塗るなんてことをやったのです。


いま教育の危機が叫ばれて久しく、教師も疲れ切っています。