『反ブッシュイズム2 終らない戦争』岩波ブクレットNo.601、アンドリュー・デウィット/金子勝よりピックアップ:

ほとんどの先進社会では、経済発展に伴って宗教的信仰心が薄れるものだが、米国は例外的存在だ。約60%の米国人が、宗教は彼らの生活において重要な一面であると考えている。このように考える人は、他の先進諸国では約10%、スカンジナビアのほとんどの国ではかろうじて5%程度の人びとしかいない。


米国の信心深い人びとは多数が投票に行く。しかも、彼らは非常に保守的である。2003年2月にPEWリサーチセンターが行った世論調査によると、福音主義キリスト教信者の77%が対イラク戦争を支持している。


これらの人びとは常に保守であったが、かつては貧しく、田舎に住み、政治からは疎外されていた。そのことが彼らの投票率を低いレベルにとどめ、彼らの票を獲得するために公共政策が変更されることは、ほとんどなかった。しかし、この状況は1970年代に入って変化し始めた。


福音伝道者たちも都市部や郊外に移住し、次第に1960年代から現われた市民権、フェミニズム、性の多様性の推進運動に怒りを示すようになった。そして、彼らは、宗教関連問題やその理念を共有する候補者を後押しするために、1979年にロビー団体「道徳的多数派」を設立した。


ロナルド・レーガンは、宗教的保守派の望んだ政策を実行したというよりも、彼らが聞きたいことを言っただけだった。父ブッシュも、宗教的保守派の過激な要求を受け入れなかった。それが大統領再選に失敗した理由の一つになった。


ブッシュは父の失敗から学んだだけでなく、自身も福音主義的精神を持っている。