TBSラジオ(2007年5月22日)『コラムの花道』町山智浩からピックアップ:

5月15日、米国の宗教右翼の大物ジェリー・ファルウェルが心臓麻痺で死んだ。


ファルウェルが左右を問わず嫌われるようになった理由は9.11テロの時に、『これは神の怒りだ。中絶したり同性愛をしたり人権派の弁護士が幅をきかせているから神の怒りを買った』と発言したから。


宗教右翼は1980年代から共和党をコントロールするようになった。アメリカでの宗教右翼のコアな部分は3000万人くらい。アメリカの真ん中は人口が少ないのに選挙の1票が重く、その部分に信者が多く、動員力が強いのがキリスト教保守。そのため政治的権力を握っている。


1980年まではアメリカの宗教家は政治にかかわらなかった。カーター大統領はアメリカ大統領で最初のキリスト教原理主義者だった。しかし、リベラルで黒人にも権利を与えようとしたので、キリスト教右翼から嫌われた。ファルウェルは黒人と白人は分離される対象であると言っていた。


1973年にアメリカで中絶が合法化されたが、ファルウェルは怒り狂った。政治に参加するしかないと言い始めた。最初にしたのがカーターを叩き出して、レーガンを大統領にすることだった。それから共和党の最大支持基盤がキリスト教右翼になった。


モラル・マジョリティーという組織を作り、中絶反対や同性愛反対で、プロテスタントカソリック、長老派、さらにユダヤ教徒までまとめた。


ユダヤ教徒との結託が問題。イスラム教と戦うイスラエルに軍事援助しろと政府に圧力をかけた。当時不思議がられたが、中東に危険な状態を起こして第三次世界大戦まで拡げて核戦争で人類を絶滅させることがファルウェルの希望だった。


それが聖書に書かれたハルマゲドンだと。ハルマゲドンになると我々正しい福音派は神に召されてどこかに避難するから、核戦争の後で神とともに帰ってくるとファルウェルは言った。


文化戦争はこの人が火をつけた。ファルウェルは死んだが、ドブソンなどカルチャーウォーの後継者は育っているので現状は変らない。

(by pick-up)ハルマゲドンを自作自演する人物が共和党をコントロールするというのは、日本で言えば、たとえばオウム真理教自民党をコントロールするようなものじゃないのか。実際には自民党をコントロールしているのはオウム真理教じゃないが同じくらい問題のある宗教右翼らしい。