TBSラジオ(2007年7月10日)町山智浩「コラムの花道」よりピックアップ:

町山智浩アメリカは左翼も右翼も星条旗を振る。反体制の人も星条旗を振る。星条旗は独立したときの精神の象徴。


独立宣言の中にある『われわれ人民は』という言葉は黒人も入るし、移民も入るし、日本人もインディアンも身体障害者も入る。その人達の人権を保証するのが星条旗だからインディアンみたいな人達も独立宣言の理想を実現しろと星条旗をつきつけるやり方をするんですよね。


60年代、ベトナム戦争のころ、反体制の人たちが星条旗を焼くということをやっていた。国家に対する侮辱であるということで取り締まる法律を憲法に組みこもうとしたことがある。国会を通ったが、最高裁違憲になったんです。


要するに自分で買った星条旗を焼くのは表現の自由だから、法律で禁止するのは憲法違反だ。ということで星条旗焼くのはOKなんです。


星条旗憲法(独立宣言)の精神の象徴だから、星条旗は自分を焼くことを保証するんです。そうなると星条旗を焼く人がいなくなっちゃた。無意味だから。


共和党は何度も星条旗を神様のように扱えと言っているんですけど、最近も否決されて。実際は、星条旗星条旗を焼くことを許しているから、焼く人がいなくなったんです。


小西克哉)似たような構造は独立宣言の中にあってね、人民は革命を起こしていい…


町山智浩)修正第二条の銃を持っていいというのは、アメリカ政府が気にくわなかったら倒していいっていう保証なんですよね。日の丸・君が代にしても強制するのがいいのか…。


『なんや、これ?アメリカと日本』米谷ふみ子/岩波書店/2001年よりピックアップ:

息子の通った(アメリカの)学校では、毎日「国旗」に宣誓をすることが規則とされていた。敗戦後、日本にやってきた進駐軍が「旗というものは、布切れに過ぎない。あんなものに敬礼するのは偶像を崇拝しているのと同じだ」と言っていたことに感銘を受けていた私は驚いた。


息子には私の意見を伝え「自分の意見で判断して、したかったら宣誓したらいいのよ」と言っていた。が、息子はしなかった。


小学校3年生の担任の先生は、自分の確固とした意見を通すことは、民主主義の標本であるとクラスでほめてくれた。が、他の先生は違っていて、毎年先生が替るたびに私が校長室に呼ばれ担任の文句を伝達された。そのたびに私は進駐軍の話をした。


だが、ある先生は最後まで頑張った。それで、私は教育委員会に電話して尋ねると、憲法上個人の信条を守らねばならないから強制はできないという返事で落ち着いた。


アメリカには多くの移民がいるので、アメリカ人であることを自覚させるのに国旗に宣誓をさせることは少しは必要なシステムかもしれないが、日本は、移民をできるかぎり入れないようにしている国なので、国旗や国歌を押しつける必要はないと思う。何か目的が違うようだ。


息子の学校で、宣誓があったのは小学校と中学校だけで、高校ではなかった。


息子の嫁が、ドイツで生まれオランダで育ったから、「学校で国旗に宣誓とかあったの」と尋ねると、「そーんなことドイツでもオランダでもしたことなかったわ」と驚いたように言った。フランス人の友人に尋ねてみると「フランス人に政府の言うことを聞けと言えると思いますか?そんなこと法律にしたら革命が起こりますよ。ネバー」ということであった。