『日本の医療』池上直己・J.C.キャンベル/中公新書/1996年よりピックアップ:

国民の医療を見る目が厳しくなっている。ところが、諸外国から眺めると、日本の医療は非常に優れているのである。日本の乳児死亡率などの保健指標は世界の最高水準にある。こうした成果は所得格差が少ないことや、教育水準が全体的に高いことに負う点が大きいにせよ、医療自体の果たしてきた役割も無視できない。


また、国民全員が医療保険に加入しており、どこの医療機関でも受診できる。一方、医師は自由に診療することができ、出来高払い制度に基づいて診療した内容に応じて収入が増えるようになっている。医療費は、世界的には低い水準にあることで注目されている。


日本の状態と対照的なのがアメリカである。医療費は世界一高く、GDP比からみて日本の二倍にも達するにもかかわらず、保健指標は先進国の中では中位以下であり、国民の8人に1人は医療保険に加入できない状態である。そのうえ、受診できる医療機関が保険者によって限定されており、医師は入院させる前に保険者から許可を得なければなならいなど制約が設けられている。

(by pick-up)日本の医療の良かったところは破壊されつつある。