毎日新聞(2007年4月8日)斎藤環よりピックアップ:

科学とオカルトには共通点も多い。結果には原因が先行するという因果律の体系だ。私が懸念しているのは、昨今の脳科学ブーム、スピリチュアルブームである。「脳」と「心霊」は、意外に相性が良いのではないか。まるで「科学」と「オカルト」のように。


宗教心理学者の堀江宗正氏によれば、最近のスピリチュアリズムの特徴は、宗教との距離感であるという。オウム事件以降カルト的なものへの拒否反応は強い。


しかし一方で、生きる上で「価値規範」という幻想を必要とする。かつては宗教や思想がその幻想を支えた。支持者が多いほど、価値規範はリアルなものになった。しかし、ある時点から、この関係は逆転する。集団性を帯びた価値規範は、まさに集団性ゆえに顧みられなくなりつつあるのだ。かくして価値の無党派層が拡大した。堀江宗正氏の言葉を借りるなら「霊は信じるが無宗教」、「カルトはバッシング、オカルトはブーム」である。


スピリチュアリズムとは、この層にアピールしたのだ。科学とオカルトを媒介するものは、おそらく自己愛なのだ。