南海先生の主張よりピックアップ:


【クイズ】次ぎの文章はいつ頃書かれたものでしょうか?

たとえば、中国などは、その風俗、風習から言っても、その文物、品格から言っても、また地理的に言っても、アジアの小国としてはいつもこれと友好関係をあつく、強くすべきで、たがいに恨みをおしつけあうようなことのないよう、努力すべきです。


わが国がいよいよ特産物を増し、物資を豊かにするならば、国土が広く、人民のいっぱいいる中国こそ、われわれの大きな市場であって、尽きることなく湧く利益の源泉です。


この点を考えずに、ただ一時的に国威発揚などという考えにとりつかれて、ささいな言葉のゆき違いを口実にして、むやみに争いをあおりたてるのは、ぼくから見れば、まったくとんでもないゆき方です。


こういう議論をする人もある、中国はもともと、ずっと前から日本に恨みをはらそうと思っている。こちらがたとえ礼をあつくし、友好の情をふかくして、仲よくしようとしてみても、も一つの小国との関係から、むこうはいつも怒りの心を持っている。それで機会さえあれば、むこうはヨーロッパの強国と共謀し、約束を結んでわが国を排斥し、強国の餌食にして、自分の利益をはかろうとするようなことがないとはいえない、と。


しかし、私の見るところでは、中国はそんなことまでは考えていないように思われる。多くのばあい、国と国とが恨みを結ぶのは、実情からではなくてデマから生ずるものです。実情を見破りさえすれば、少しも疑う必要がないのに、デマで臆測すると、じつにただごとならぬように見えてくる。だから、各国がたがいに疑うのは、各国のノイローゼです。青眼鏡をかけて物をみれば、見る物すべて青色でないものはない。外交家の眼鏡が無色透明でないことを、私はいつも憐れに思っています。


こういうわけで二つの国が戦争を始めるのは、どちらも戦争が好きだからではなくて、じつは戦争を恐れているために、そうなるのです。こちらが相手を恐れ、あわてて軍備をととのえる。すると相手もまたこちらを恐れて、あわてて軍備をととのえる。双方のノイローゼは、月日とともに激しくなり、そこへまた新聞というものまであって、各国の実情とデマとを無差別にならべて報道する。はなはだしいばあいには、自分じしんノイローゼ的な文章をかき、なにか異常な色をつけて世間に広めてしまう。


【答】上に紹介したのは、中江兆民『三酔人経綸問答』(1887年)の中の南海先生の主張です。「三酔人経綸問答」は、『(当時の日本では)平和主義的な立憲君主制が妥当だとする現実主義の南海先生』と、『民主制・非武装論の洋学紳士』と、『軍国主義・侵略論の豪傑君』が国家を論ずるという形式で書かれています。


120年前の批判が現在にぴったり当てはまるのに驚いてしまう。結局、日本は南海先生の忠告を聞かずに軍国主義へ走り、大失敗をしました。


現在、中国や韓国に対する攻撃的な言論がネットや右翼メディアなどに蔓延しています。この国は、本当に学習能力に欠けています。


http://ffeck.tsuchigumo.com/nationalism.html


http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20070115/p1