毎日新聞(2007年12月16日)鹿島茂による書評からピックアップ:

『昭和十年代の陸軍と政治』筒井清忠岩波書店

定説では、陸軍は2.26事件直後に広田内閣が復活させた軍部大臣現役武官制を盾に、日本の政治を翻弄したことになっている。


しかし、軍の力が強いときにはこの制度がなくとも内閣は崩壊せざるをえなかったが、反対に陸軍の力が相対的に弱まっていたときには、首相が陸相を更迭したり、天皇陸相を指名したりすることも可能だった。


著者の結論はこうである。「以上の考察から浮かび上がってくるのは、この時期の政治過程における宮中関係者(特に近衛)やマスコミの役割の重要性であるが、軍部大臣現役武官制原因説はこれらの責任を相対化する役割を強く果たしてきた可能性が高い」