NHK総合テレビ(2007年9月19日)「クローズアップ現代」よりピックアップ:

企業からみて人件費が安く、人員調整が簡単な派遣労働。派遣が法律で認められたのは、およそ20年前、業種が限られていたが、1990年代に規制緩和がすすみ自由化された。派遣法に違反する違法派遣が増えている。


多重派遣の各段階でピンハネ社会保険への未加入派遣。中途解約で給料も補償しない。派遣期間がオーバーしても社員にしない。


派遣事業所は急増している。数年前に始めた業者の月収は150万円。12畳の事務所スペースを確保して特定派遣の届出書を出せば開業できる。この業者も労働者を社会保険に加入させていない。一人あたり3万円利益が減るからだ。


脇田滋派遣労働者は労働法のない世界で働いている。

国谷裕子派遣労働者は派遣会社の社員という位置付けですよね。

脇田滋)そうです。しかし、派遣会社は派遣先を顧客として考える。トラブルがあっても派遣先の側にたって労働者を抑えにかかる。

脇田滋)ちらばっているので労働組合も作りにくい。


日本経済団体連合会御手洗冨士夫会長は、今の派遣法のように3年たったら正社員にしろと硬直的にすると、たちまち日本のコストは硬直的になってしまう。したがって派遣法を見直してもらいたい、と発言した。


経団連は7月政府に派遣法のさらなる規制緩和をもとめた。派遣禁止業務の解禁、派遣期間制限の撤廃、期間制限をこえた労働者を社員にする義務の廃止など。今まで違法だったことを合法化するもの。


「連合」の長谷川裕子総合局長は、企業はコスト論で人件費を抑えることだけを考えたら社会がなりたたない、と言う。

(by pick-up)新自由主義共産主義も極論である。極論者は、人間を単純化して見るので非現実的である。新自由主義も、共産主義も、人間の倫理的行動を前提にしている。新自由主義は、人間はルールを守って競争すると仮定し、共産主義は、人間が利己的行動を取らないと仮定する。現実の人間は違う。派遣業者の例のように、ちょっと倫理を無視すれば、大きな利益を得ることができるのだ。


アダム・スミスは、「道徳感情論」で、自分さえよければいいという行動をとると、周囲の理解が得られず、取引関係から閉め出されてしまう、と書いているらしいが、富の蓄積が極端に進むと、その力はルール自体を変更する力を持つようになる。経団連のように既得権をもつものが、自分に有利なルール変更をするのである。