東京新聞(2007年6月14日)「こちら特報部」よりピックアップ:

脇田滋(労働法)「日本の派遣労働は労働法のない世界。フランス、イタリア、ドイツでは、派遣労働でも同一労働の場合、同等の待遇をするよう定めており、一定期間で正社員にする『見習雇用』としてしか派遣を認めていない。


日本は派遣法そのものが派遣先に有利にできている。人件費はいつでも削れるし、派遣打ち切りという形でいつでも首を切れる。企業にとって、こんな便利なものはない。一方、派遣労働者は有給休暇などを行使しようとすれば派遣を打ち切られ、労基法の最低基準以下の立場に置かれている。恥ずかしいことだ」

朝日新聞(2007年6月13日)「ニュースがわからん!」よりピックアップ:

95年に約1000万人だった非正社員は、この10年余りで約1700万人に増えた。逆に正社員は約400万人減った。


95年に日経連(現日本経団連)が、終身雇用中心だった労働者を、長期雇用の幹部候補と、雇用期間を限った専門職やパート的労働者に分けるよう提言している。


不況に加え中国などとの競争も激しくなり、社員と非正社員の使い分けが企業に定着していった。全労働者に占める非正社員の割合は95年には20.9%だったが、07年1〜3月期平均では、過去最高の33.7%だ。


日本では正社員に比べ、非正社員は賃金などの待遇が極端に低い。働いても生活保護以下の暮らししかできないワーキングプアの拡大にもつながっている。製造業では技術の継承ができなくなり、製品の品質が落ちる心配も出ている。経済界の非正社員のニーズは高く、政府に一段の労働法制の緩和を求める動きがある。


東京新聞(2007年6月12日)高梨昌「労働ビッグバン」を問う(下)よりピックアップ:

医療の「治療から予防へ」と同様に雇用も「失業対策から雇用政策へ」と展開してきた。ところが、労働ビッグバン提唱者は、失業の事後的対策を「セーフティネット」と誇張して、歴史の歯車を逆回転させる失業対策への先祖返りを提言している。


長期的には、正社員への切り替えを進めていくべきである。


そのためには第一に、1999年の派遣法改正で派遣対象業務を自由開放した「ネガティブリスト方式」を廃止し、法制定当初のように、専門的知識経験を必要とする業務に限る「ポジティブリスト方式」に戻すことである。


第二は、偽装請負対策である。ヒトだけ派遣し、発注元の指揮下で働かせているケースは「請負」とは言えない。


第三はパート労働対策。企業別組合への加入や同一賃金の適用運動を促進。地域別法定最低賃金を地場の時給相場を踏まえた決定原則に改正することである。


このほか、ハローワークの民営化を目指す提言は論外で、国の責任で無料の職業紹介を行う原則は堅持すべきである。


(by pick-up)終身雇用中心の社会でなくてもいいと思う。だが、企業がいつでも首を切れる便利な非正社員を必要とするなら見返りを支払う必要がある。ビジネスはギブ・アンド・テイクが基本じゃないか。正社員より便利な非正社員の労働をテイクするなら、上積みした給料をギブするべきである。


ワーキングプアを拡大するような政策をとるならば、追いつめられたオトナシイ人は、ホームレスになるか、自殺するしかない。そして、オトナシクナイ人は、強盗になったり、詐欺師になったり、暴力主義的な政治活動に向かったりするだろう。