東京新聞(2007年4月22日)ロナルド・ドーアよりピックアップ:

IMFの報告書「世界経済見通し」によると、グローバル化が加速されてきた1980年以降に、先進国の労働分配率が平均69%から62%へ下がってきた。特に低いのは最近の日本の59%である。


IMF世界銀行が創立された戦後直後には、30年代の世界不況の記憶が新しかった。国内では、政府の経済への介入、国家間では、合議制による国際機関の必要性を認める思想が支配的であった。


1980年、レーガンサッチャー新自由主義・自由市場万能主義が支配的な地位を占めるようになり始めた。その市場原理主義思想を「ワシントン・コンセンサス」というようになった。これはワシントンにおけるIMF・世銀・米国財務省の政策的合意をいう。特に、発展途上国に対する援助の条件として強いる政策に関する合意である。なぜ米国財務省が入るかといえば、自由市場とは強いもの勝ちの市場である。ルールを設定するのは覇権国である。


ドイツは、それと異なった「企業は人なり」の思想の世界における最後の要塞である。今まで従業員の利益をも守る会社法を維持してきた。日本のように、「モノづくり」の国で最近日本よりも景気がいい。なのに、そのドイツでも金融業者が先頭に立って、会社法の「株主主権的」改正を呼びかける運動が活溌になってきた。米国の経済的覇権に伴う思想的覇権は恐ろしい。