毎日新聞(2007年4月21日)よりピックアップ:

安倍政権が、国民の精神面に働きかける取り組みを強めている。首相直属の教育再生会議が道徳の教科化や「親学」の創設を提唱し・・・。


教育再生会議は今月17日、第2分科会(規範意識)が、親にあるべき姿を教える「親学」を提起。首相に近い八木秀次は「国民1人1人が日本をもっと良くするための精神的な運動をやろうということじゃないか」と指摘、「国家の根幹、国民意識の基本にかかわる問題について、政府として取り組み始めたということだろう」と話した。


これに対し、保阪正康は「美しい国という抽象的な言葉を政治目標に据えるのは、皇国や臣民というあいまいな言葉を多用して政治を揺さぶった昭和初期の軍人を想起させる」と懸念を語った。


『地球人口100億の世紀』ウエッジ選書(1999年)よりピックアップ:

(大塚柳太郎):ナチスは何のためにそうしたんだろう。


松井孝典):それは結局、愛国心らしい。美しい国を維持するには、都市のサイズは有限でなければいけない。それでアウトバーンで都市をつなげ、木を植えて森を再生した。ある意味では全体主義的な遺産といえるでしょう。だから、今日のドイツがあるともいえるわけですよ。


環境問題とか人口問題というのは、たとえば国家などの政策的な力によって規制しないと、何も解決しないものかもしれない。個人が欲望のままに自由気ままにやって、市場で自動的に調整されることを期待していても、それは非常に難しいんじゃないか。


川勝平太『富国有徳論』中公文庫(2000年)よりピックアップ:

1998年3月に戦後5度目の全国総合開発計画が橋本内閣のもとで策定されました。五全総は『21世紀の国土のグランドデザイン』という表題をもち、「美しい国土の創造」という副題を掲げています。基本目標を「歴史と風土の特性に根ざした新しい文化と生活様式をもつ人々[日本人]が住む美しい国土、庭園の島ともいうべき世界に誇りうる日本列島を現出させ、地球時代に生きる我が国のアイデンティティを確立する」と述べています。

(by pick-up)安倍晋三は『美しい国』と言ってはみたものの自分にアイデアはなく、空虚な音色が聞こえて来る。ファシスト気分はあるようだが。


松井孝典は個人よりも全体や国家を強調する。そしてインターネットで個人がバラバラになると心配している。しかし、現実の日本は、外国人から見ると、あいかわらず集団同調主義である。松井は学生時代には、『個人が主体で権力に束縛されない社会を』等と言っていたらしい。


川勝平太五全総を賛美したが、これは土建政治の臭いが強い。一方で、川勝平太は、石原慎太郎都立大学攻撃に協力して、『大学教育は国家に頼らなくても民間で賄える』などと発言した。今は、教育再生会議の分科会の主査で、大学に卒業認定試験の導入を検討するなど変なことをやっているようだ。


川勝平太は、今西錦司を読んで、マルクス主義から脱したという。今西は1930年代の日本の全体論的哲学を援用して生物社会の理論を作ったという。川勝平太は政治権力が新自由主義的なときには、都立大学に関する発言のように、それに寄り添う発言をしているが、今西は進化における競争の役割を否定していたのである。